YouTubeの収益減少、プライバシーの問題、悪質広告の問題と、ネット広告を収益源とするビジネス、ネット広告を運営するPFのビジネスが最近ますます苦境に立たされています。あらためて現状をまとめてみました。
目次
プライバシー問題の動向
まず、大きなところにプライバシー問題があります。これまでネット広告は、WEB上のユーザーの行動履歴からユーザーの趣味嗜好を解析し、ユーザーにとって興味のありそうな広告を提供することでより収益を得ようとする戦略でした。この戦略がプライバシー上問題あるのではないかと騒がれ技術・法的側面両方で対策が始まっています。
プライバシー技術の進化
まず技術的側面の方が先に動きました。PCやスマートフォン端末、ブラウザ開発企業間で、CookieやLocalStorageといった内部保存データ、IPアドレスなどのユーザー情報についてWEBサイト運営者の利用制限を技術的に制限する動きが始まりました。
法的規制の強化
これに合わせて法的規制も始まります。欧州のGDPRが先行事例として有名ですが、日本でも改正電気通信事業法が2023年夏に施行され、外部送信規律が指定されました。
詳細は以下の総務省や外部のサイトにあるためここでは省略しますが、簡単に説明すると広告掲載のためにサイト運営者がGoogleなどの連携事業にデータ提供などをする場合、ユーザーに告知できるようにしなければらない。オプトアウトの方法なども明示しなければならないというものです。
悪質サイト運営者は無視する可能性がありますが、少なくともまっとうなビジネスを行うのであれば必ず守らないといけないものとなっています。
広告単価・広告収益の減少
そういったプライバシー対策の影響に加え、昨今の景気後退に伴い広告単価が減少しています。YouTuberなど広告収益の減少だけでなく広告PFにも打撃を受けています。
2023年にLINEとヤフー社が合併しました。これも広告PFでもあり、パブリッシャーとして広告収益を受けるメディア運営者でもある両企業にとって大打撃を受けたことが原因と発表されています。
悪質広告対策の動向:低品質広告の増加
もともとインターネット広告は品質から評判がよくありません。日本インタラクティブ広告協会の2022年調査によると、テレビ新聞などの他メディアの広告の信頼度が40%代に対してネット広告は22.3%と特筆して信頼度が低い状況です。
前述の広告単価の減少は単に事業者の打撃にとどまらず、低品質広告の増加も発生させてしまいました。
偽広告・詐欺広告の増加
低品質広告の中で特に悪質なものは偽広告・詐欺広告です。この横行は本来の広告元の事業者や、WEBサイト利用者にも大きなダメージを与えています。
特に検索広告のダメージは深刻です。検索上にのトップに偽広告が出るようになりました。日本においても、えきねっとの偽サイト問題など、詐欺を目的とした偽広告が出る問題が発生しています。
技術的対応:広告ブロック技術の進化
こうした事情から、そもそも広告をブロックする技術も進んでいます。Braveブラウザといった広告を出さないブラウザの登場、EdgeやChromeといった大手ブラウザでも広告ブロッカーの拡張機能が出現しています。
法規制の動き:ステルスマーケティング規制
遅れてですが法規制も始まっています。2023年秋に改正景品表示法が施行されて、広告主から対価を得る場合は広告である旨を表示することが義務付けられました。
この規制は、単にアフィリエイトやアドセンスといった広告PFを利用するだけでなく、誰かに対価報酬をもらうかたちで記事を公開する行為も対象としています。そのため、NoteやAmebaなど一般ブログという形で収益を広告PFを通じて得ていない人でも注意が必要です。
パブリッシャーの取りうる対応
以上のような背景から、広告収益のビジネスモデルはますます厳しくなっています。サイト運営者においてとりうる対応も限られています。
サイト上の広告枠追加
サイト上の広告枠の追加は正直のところ最悪の対策です。そもそも、広告ブロッカーを使うと根本対策ではありませんが、大手ネットメディア含め最近は増えたイメージでおります。Googleなどの広告PFもポップアップ表示の広告商品を出すようになり始めており、低品質広告が多い今の現状だとますますの悪循環を抱えています。
サブスクリプションなどの課金対応
ある程度信頼がおけるメディアであれば課金対応も考えられます。もっともこれができるのは限られたメディアサイトやライターだけになるだろうと思われます。
考察:メディアビジネスは今後ますます厳しくなるか
やはり、ブログ・動画配信、ニュース記事などすべてのますますメディアビジネスはますます厳しくなっていくのではないかと思います。
もともとフェイクニュースの問題、こたつ記事、偏向報道の問題などがあり、低品質メディアの撲滅にはつながるかもしれませんが、新規参入は厳しくなっていくと思われます。新規参入するのであれば何らかの専門家であるなど、ある程度別のキャリアで培った専門性が必要になると思われます。
サブスクリプションなどができる大手メディアなら大丈夫かというとそうでもなさそうです。例えば公正取引員会がネットメディアサイトの実態調査を行ったり、文化庁がクリエイターへの単価還元について議論をしております。必ずしも、大手メディアプラットフォーム一人勝ちという状況にはならなそうです。
私個人のこのサイトにも広告やアフィリエイトを入れていますが、実務上の勉強を兼ねて広告を掲載したりしているのでマネタイズは気にしていませんが、広告収益を元にネットメディアを運営している人にとっては、大手、中小、個人運営者に限らず、ますます厳しい時代が来そうです。
終わりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。何か発見などがあれば幸いです。
Photo by Markus Spiske on Unsplash