この記事について
先日、ウォーレンバフェットが日本の5大商社の株を購入しているという発表をしました。すでに様々な経済ニュース記事、著名投資家ブロガーやYoutuberが5大商社に関する分析を書いています。私自身もそれらを読んだり、独自で商社について調べていたので分析ノートとしてこの記事にまとめてみました。。
ビジネスモデルについて
まず定性情報、ビジネスモデル面についてまとめてみます。
幅広いビジネス領域
企業ごとに得意分野はありますが、5大商社は「ラーメンからミサイルまで」と言われるほど幅広い領域をビジネスとしています。商社の人、1人に商社のビジネスを聞いても商社の特性をつかむことは不可能なだけでなく、そもそも「これだ!」という特定領域がそもそも存在しないということが特徴です。
投資観点で言うと、分散されていて1つの領域で倒れることはない一方で、絶対的なものもないため、爆発的な成長の期待も難しいという点もあります。
トレーディングから投資事業、総合ビジネスの会社へ
商社というとやはりトレーディング、つまり安く仕入れて高く売るというビジネスの基本中の基本を実践している企業です。前述のような総合性もさることながら、特定領域に絞っても、常にビジネスに対するアンテナは高く張っており、ビジネスチャンスを虎視眈々と狙っているという印象があります。
企業理念にその点が強く現れていると思います。Googleのビジョンが「1クリックで世界の情報へアクセス可能にする」、バンダイナムコホールディングスが「エンターテインメントを通じて世界中の人々に「夢・遊び・感動」 を提供」と、それぞれが持つ事業をベースにしているのに対して、伊藤忠商事が「(売り手・買い手・世間)三方よし」となっており、かなり漠然としている一方で純粋なビジネスへの追及を求めているという印象を持つ点も特徴的であると言えます。
後述しますが「商社不要論」が出ているように産業構造の変化に伴い、トレーディングだけでなく、投資事業にも力を入れています。5大商社における投資は、単なる金銭的な投資だけでなく、人材派遣、情報提供など、人、ナレッジにもおよぶ点が特徴的です。(その点でコンサルティングとも異なるという点も特色です。)このあたりも他事業以上にビジネスに対する純粋な意識の高さが感じられます。
コモディティ
とはいえ、「安く仕入れて高く売る」という観点上、資源ビジネス中心という印象がとても強いです。ウォーレンバフェットの5大商社の株購入について、様々な投資家や経済ニュースが、「今後のコモディティの価格上昇を見込んでの投資である」という分析をする意見が多いのも、資源ビジネスが中心という点を物語っているといえます。
グローバル展開
日本企業であり、日本に対してもビジネス展開していますが、元々が明治維新から始まる日本の国際貿易の中核企業であったという点から、グローバルな国際ビジネスに強い点も特徴です。世界全体の影響は受けますが、日本経済単独の停滞には強いという点があります。
ファンダメンタルについて
続いてファンダメンタル面についてもまとめてみます。
豊富なキャッシュ
自己資本比率は30%程度です。とはいえ借金が多いわけではなくむしろ豊富なキャッシュを持っており健全です。PBRも1倍を切っています。
割安株
ESG面で嫌われている点、業務の多様性という商社のビジネス的性質故に割安に放置されています。PERも10以下です。
好況・不況で差がある
同様な業界に自動車業界もありますが、ビジネスの会社故に好況と不況で差があります。常に決算は好調というわけでもなく、赤字となってしまった年もあります。
大きな成長は期待できない
やはり大きな企業なので、爆発的な成長は期待できないと思われます。利益に対する配当性向が高いのもそれを表しています。
その他
その他気になった商社のワードについてまとめてみます。
商社不要論
やっぱりコア事業を持っておらず、「中抜きビジネス」という性質上「商社不要論」という声が頻繁にあります。トレーディングから投資事業と転換してうまくシフトしていますが、投資事業であっても同じ声は発生するため、常にこの声と戦っていかないといけない性質を持っています。
財閥・旧態依然
「三菱」「三井」「住友」と旧来からある財閥系、古くからある日本の旧体制下にあるという点も気になるところです。比較的意思決定のスピード面で日本の旧体制派批判されます。ビジネスはスピード勝負というのが常識があるので、旧体制が今後のビジネス展開に足かせにならないかとても気になります。
終わりに
いったんの情報をまとめました。
投資は自己責任なので私自身の考えだけで投資判断していただきたくないですが、私自身は5大商社を投資対象とすることは2020/09の現時点では見送っています。様々な領域のビジネスを扱っている故に強い安定性は魅力的ですが、配当性向の高さを考慮したとしても、大きな成長性に疑問があること、財閥・旧態依然という企業の仕組みが今後どう影響するのかという点で不安があるからです。
景気循環株としての一時的な上昇は期待できると思いますが、一時所持を目的とする株式購入戦略をあまり私が好きでないのも私の投資判断の足かせになっています。
とはいえ、日本を代表する企業ビジネスとして引き続きウォッチしていますので、この記事についても修正情報があれば随時追加していこうと思います。
Photo by Roberto Junior on Unsplash