インタビュー・ヒアリング・アンケートなど人に聞くことを通じた調査は普通の調査活動よりも注意を持って取り組む必要があります。特に実態調査をしたいという意図であるならば相当注意が必要です。時として思わぬミスリードを生んで満足な結果がでないかもしれません。この記事では私が気をつけている人に聞くことをベースにした調査で気をつけていることを紹介します。
なお、ミスリードを生み出しやすいという性質について、逆にこれを注目して質問者が答えて欲しい方向に誘導する技術も存在しますが、これはどちらかというと調査術というよりは交渉術のジャンルなのでこの記事では触れません。あくまで純粋な実態調査という目的で使うときの技術を紹介します。
インタビュー・ヒアリングなどの対面調査
まずは、インタビューやヒアリングといった対面調査について気をつけていることをご紹介します。
クローズドクエスチョンよりオープンクエスチョンで
対面の一番のメリットは、当意即妙に自由に進行を変更できることです。その点でYes、No、単発回答で終わるようなクローズドクエスチョンはなるべく避けたいです。これらは対面じゃなくてもできるからです。相手の発言や表情を感じ取って、「どう思いますが・どう考えていますか」といった自由な発言ができる質問を増やしたいです。
とにかく観察が大事
質問をして進行する必要がありますが、基本はとにかく観察が大事です。話したことだけでなく、言葉のニュアンス、表情、しぐさも丁寧に確認したいです。ポジティブな話をしているのにもかかわらず苦しそうに話していたら、それは一概にもポジティブな情報ではないからです。言葉以外の情報もとても大切と私は思っています。
アイスブレークも大事
表情なども使う都合上アイスブレークも大事です。アイスブレークを行うことで、その人の人となりなども掴むことができます。例えば先程の「ポジティブな話をしているのにもかかわらず苦しそうに話していた」ケースも、最初からそういう調子だと単に体調が悪いだけの可能性もあります。アイスブレークを利用してそのような情報も感じ取りたいところです。
最低5人はききたい
対面調査におけるユーザビリティテストの研究から判明したことですが、大体5人くらいに調査をすると、ある程度法則が見えてくるようです。その点でまず5人ということを目標にしたいです。
実はとても重要な終了直後の感想
実は、インタビュー終了直後の感想がもっとも重要な調査結果と言われています。なぜならば言葉以外のしぐさ、表情も含めると全てのデータを保存することはビデオ撮影でもしない限り不可能に近いからです。その点で終了直後の感想が調査におけるデータとして、最も記憶として残っている状態での分析であり、重要であると言われています。
アンケートなどの非対面調査
続いてアンケートなどの非対面の調査において私が気をつけていることをご紹介します。非対面調査は手軽な反面、双方が伝達できる情報量が減ります。相手への質問意図を正確に伝えることが難しくなります。その辺りを特に注意して実施したいと思っています。
シンプルな質問を心がける
対面調査とは逆にシンプルな質問を心がけたいです。究極Yes、Noでもいいと思います。逆に丁寧な補足が必要な質問はなるべく避けたいです。説明をたくさん書くことは、相手に対しても読む上で嫌なものですし、質問を作る側も骨が折れます。なるべくシンプルにしたいです。
NPS調査など、なるべく有効な定石手法を使いたい
繰り返しですが本当に有効な実態調査をおこないたい場合、アンケートは本当に難しいです。そのため、なるべく経済学・商学研究で有効と判断される調査手法を用いたいです。
代表的な調査手法で「NPS(ネットプロモータースコア)」というものがあります。これはアンケートをとりたい対象に対して「他人に推奨するか」といった質問をします。この質問は「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を数値化する指標であり、業績に直結しやすいと言われています。このような有効といわれる手法をベースにアンケートをとった方が確実性があると思います。
分析方法の選択も大事、アンケート結果の集計において平均点集計をしない選択も
もうひとつ、リーンスタートアップの手法で使われるアンケート手法を紹介します。この手法における質問方法は、よくある新商品アンケートの「絶対買いたい、買いたい、わからない、買いたくない、絶対買いたくない」という5段階項目アンケートです。しかしながら分析の仕方に大きな特徴があります。
このアンケートを使う場合、実は「絶対買いたい」以外の回答は事実上のブラフです。このアンケートにとって分析上大事なのは「絶対買いたい」の回答数だけになります。
リーンスタートアップにおけるこのアンケートの目的は、アーリーアダプターと呼ばれる新しい商品を試してみようと意欲のあるユーザー層の存在確認です。このユーザーを探すアンケートをする場合、「絶対買いたい」に票を入れてくれる人がいない場合、アーリーアダプター層が存在しないか、存在しても非常に小規模であることを裏付けます。平均点集計上では仮に高い得点でも、「絶対買いたい」がいなければ、アーリーアダプター層の心に刺さっていないことがわかります。これでは商品がHITする可能性が低いという分析結果になってしまうのです。
参考文献
最後に私が勉強になった本をご紹介します。
Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)
リーンスタートアップという新規事業・新商品開発のための手法解説の本です。インタビューやアンケート、データ分析について目から鱗が落ちるような解説がされています。また、私は営業職を経験したことはほとんどないですが、この本を読んでいくと商品を宣伝するにあたっても、宣伝したいユーザーがどのようなことを考えているかを考えて提案していくことがどれだけ重要かがわかってきます。
ユーザビリティエンジニアリング(第2版) ―ユーザエクスペリエンスのための調査、設計、評価手法―
製品改善におけるユーザビリティテストの手法を書いた本です。観察したことをプロダクトの改善につなげる、あるいは調査を実際のアクションにつなげる方法について、とても勉強になる本でした。
終わりに
私もまだまだ技術を磨いている最中ではありますが、人を対象にした調査について、もしも参考になることがあれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
Photo by Scott Graham on Unsplash