法律を勉強するときに私が意識していること

ビジネス 法律

私が勤め先で技術系開発部門から法律型部門に異動して1年半たちました。特に挫折したりせず無事仕事ができているもの部署の上司や先輩の支援の賜物ではあります。とはいえ、この1年半はひたすら勉強の日々でした。この記事では私が今の業務のために法律の勉強をするにあたって時に意識していたことをまとめてみようと思います。

私のように非資格保有者で初めて法律業務を行うようになった方の参考になれば幸いです。

目次

世界観を把握

どんな法律にも世界観、制定背景があります。まずはベースとなる背景を理解することが大事かなと思っています。

たとえば著作権法であれば知的財産が重要視されるなかで、知的財産を生み出すクリエイターの経済的権利を守らなければいけないという側面と、一方でこれ作品を自由に利用することで経済・文化的な社会の発展があった以上、利用者も保護していかないといけない側面があります。これらのバランスをとって、利用者・クリエイター双方の利益を守っていくことが著作権法のポイントであったりします。

ちなみに、私は法学部出身かつ、一応司法試験挑戦者(?)であるのでそんなに抵抗はありませんでしたが、法学部出身出ない方はもっと立法学のベースにある、「法の支配」「法治国家」、「公法」と「私法」、こういった概念から理解していくことも大事かもしれないです。

こういった基本的なことを学ぶ上では、のちにご紹介するビジネス実務法務検定の勉強や、伊藤塾の伊藤真先生の法律入門シリーズの本を読むと良いかもしれません。特に伊藤真先生の入門シリーズは、基本となる六法中心にさまざまなテーマで販売されており、一冊一冊が薄くてすぐに読みやすいにもかかわらず、法律の世界観・考え方をよく理解できるのでおすすめです。

学生時代、いきなり細かい法律解釈論を展開する大学教授の授業が全く理解できずこのシリーズの本を手に取ったことがきっかけでしたが、今でもおすめしたいシリーズです。

基本は法解釈(要件・定義・効果)を抑える

世界観を把握した上で次に大事なのは、各法律の解釈です。解釈のなかで重要なのは「要件・定義・効果」です。

著作権法を例に取ると、著作権という権利を得るためには、「著作物」であるという「要件」が必要になります。

そして「著作物」の定義は、著作権法2条1項1号に「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とありますのでこの「定義」に沿ったものでないと著作権という権利取得のための「要件」に該当しません。

また、「著作物」の「定義」通りの「要件」に該当して著作権を得たとして、次に問題になるのは「著作権」を得ることによる「効果」の確認が必要になります。

著作権の「効果」にもさまざまなものがありますが、今回は「複製権」を例にとってみます。「複製権」は、「第二十一条 著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。」と著作権法に書かれています。「専有する」とある以上、著作権者だけが複製する権利があります。もっとも「第三十条 (中略)個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。」という記載があるため、著作権者以外が私的使用としての複製をすることを著作権者が制限することはできません。このように「効果」にも範囲があり、この範囲を確認していくことが必要になってきます。

このように法律を学ぶ上では「要件」「定義」「効果」の法解釈を確認していくことが大事になっていきます。

続いてこの法解釈を学ぶ上でのポイントをご紹介します。

まずは条文を読んでいく

基本は法律に書かれていることなのでまずは条文を確認することがスタートです。条文に書かれている内容から「要件」「定義」「効果」を確認していくことが大事になっていきます。

管掌する官公庁のガイドラインを調べる

まずは条文と言いましたが、条文って読んでもピンとこなかったり、条文が多義的で正確な解釈が難しい場合があります。この時に最初に確認すべきであるのは各法律を管掌する官公庁のガイドラインです。

著作権を例に取ると、著作権は文化庁が管掌しています。例えば直近だと令和3年1月1日に改正著作権法が改正され、リーチサイトの規制や違法ダウンロードの刑罰化が施行されました。

これら改正にあたっての文化庁側の説明資料やガイドラインは以下のページに掲載されています。これらを確認することで条文では曖昧な部分の正確な解釈が理解できるようになります。

裁判所の判例・省庁の審判例を調べる

ここまでは法律の条文だったり官公庁のガイドラインなど、制定者側の説明を理解して行きました。しかしながら法律は人が作ったものですので、解釈のグレーゾーンがたくさんあります。これらのグレーゾーン解決・線引き理解に役立つのが裁判所の判例・省庁の審判例です。中には裁判所の判決文が解釈上の「要件」「定義」「効果」として確立しているものもあります。

実務観点だと、法解釈が悩ましい案件が発生した場合、裁判例を検索して類似ケースの存在を探すことが多いです。「判例秘書」など、重要な判例などをピックアップしたりして検索しやすくした有料のネットサービスもありますが、裁判所の公式ページでも裁判例検索サイトが存在するので無料でもある程度調査が可能です。

基本書・判例百選を読む

最後に勉強としては基本書、判例百選を読んでいくことも大事と思っています。これらは法律を体型的に学ぶことができたり、特に把握すべき重要判例を学ぶことができます。もっとも実務上ではどうしても個別具体的な法律案件を扱うがゆえに、各案件での辞書的な活用や、プライベートの勉強の時間に読んでいくことになってしまうのが実情ですが....

ちなみに、基本書や判例集の中には著名学者・官公庁が書いたもののほかに、以下のような士業試験勉強用の本もあります。詳細な内容の濃さでは前者に負けることが多いですが、素早く体型的に理解することを重視する場合、これらの方が学習コスト面で便利であることも多いです。

初学者におすすめはビジネス実務法務検定がおすすめ

最後にビジネス実務法務検定をご紹介します。

ビジネス実務法務検定は業務上で必要な法律を広く浅く取り扱っています。最初にご紹介した法律の世界観を理解すること、「要件・定義・効果」といった法令解釈の第一歩として最適な範囲を取り扱っています。資格を手に入れることよりも、勉強して理解してもらうことを主眼に置いているので試験問題も難しくなく、合格もしやすいため勉強のモチベーションも維持しやすいです。

詳細は過去に以下のような記事を書いてあります。もしも興味ありましたら一読ください。

終わりに

私自身ももう1年半という気持ちもありますが、まだまだわからないこと、理解が不十分なことだらけなのでひきつづき油断せず勉強に励んでいこうと思います。この記事が異動や新卒配属で法律業務に携わることになり、法律って今後どう勉強していけばいいんだろうと思っている方に参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

Photo by David Veksler on Unsplash

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