ここ数ヶ月のITに関する法政策ニュースについて、特に気になったものを、エンジニアと企業法務の中間的な立ち位置にいる立場の意見も踏まえつつとしてまとめてみました。
目次
電気通信事業法の改正
まずは電話やインターネット、メールといった人と人の通信の媒介を行う事業に対する法的規制である電気通信事業法の改正です。
きっかけは2021年春のLINE問題を元にした個人情報管理と言われていますが、内容としては、GAFAに関するPF規制全般の話に発展しています。
個人情報部分にフォーカスが当てられがちですが、従来規制の対象ではなかった検索事業やニュースビジネス、SNSや掲示板サイトも対象になる方向で議論が進められています。
ターゲットはGAFAといった巨大ビジネスの対応と思われますが、スモールビジネスでこの手のものを立ち上げる事業者もいる以上、法務領域にたずさわる人に限らず、ITビジネスに関わる人全員気にすべき動向ではないかと思っています。
アフィリエイト広告規制の動向
消費者庁中心にアフィリエイト広告に関する検討会が進められています。年初に報告書がでて現在パブリックコメントの募集中というステータスです。
電気通信事業法がどちらかというとITサービス提供ビジネスであったのに対して、こちらは、ブロガーなどのITサービスを利用してスモールビジネスを目指す人々に大きな影響がありそうです。
内容としては、責任の明確化、広告であるという表記の明確化といったものにフォーカスされております。私もこのサイトを通じたブロガーの一人として改めて広告の掲載には注意せねばと感じております。
ITにおける著作権をめぐる動向
最後にやはりここ1、2ヶ月で圧倒的に激しい動きがあったのは著作権に関する動向ではないかと思います。
まず大きな動きとして海賊版サイト対策の動きが激しいです。
昨年施行された改正著作権法に伴うリーチサイト規制により、リーチサイト運営社が次々と摘発されています。
また、海賊版サイトへのインフラ提供の対策についても新たな局面を迎えています。
大きなニュースとしては、主要出版社が海賊版サイトへのインフラ提供について、クラウドフレア社への訴訟提起がありました。
この他、総務省ではアクセス抑止検討会という海賊版対策検討会が数年ぶりに開催されています。
ここまではどちらかというとネガティブな話でしたが、ポジティブな側面として文化庁が利活用促進のためのデータベース一元化の動きを急いでいます。
この他、テクノロジー的な側面でこの他、NFTといったものが注目されていますが、どちらかというと特定コミュニティの中で合意を持った人の中でのみ活用されているというイメージがあります。
NFTに期待を寄せている人が多いのは事実で、私もその一人ではありますが、より著作権保護のための汎用的なものとして発展するにはどうすればいいのかという不安はあります。
また、NFTも著作権者や利用権を取得していることを証明するメタ情報でしかない認識です。
PCにおいてスクリーンショットなどが容易であること、無断転載などはもってのほかであるとしても、私的利用や引用としての利用は当然認められ保護されるべきという側面を考えると、ブラウザやOSといった他のIT技術がプロトコルとしてどのように採用するのかといった点も気になります。
個人情報保護法なども課題ですが、法律の遅れという観点では著作権法もDX化、ITの発展によって遅れている領域はないのではないかと思います。
利活用を積極的にできるようにしてビジネスを行いたい人と、著作物者としてライセンス管理といったビジネスを行いたい人との間での利益調整が非常に難しいという側面もあると思います。この他引用やオマージュ(違法性なし)とパクリ(複製権侵害)の線引きの難しさという側面もあると思われます。
文化の形成に重要な法律である一方、バランスが崩れるとどちらにとっても不幸になる法律であると思っています。良いバランスが維持され続けることを祈りたいと思います。
終わりに
最後まで読んでいただきありがとうございました。
引き続き気になる記事があれば定期的ににまとめてみたいと思います。
Photo by: Nicole De Khors on burst