インターネットにおけるプライバシーと本人確認をめぐるジレンマ

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インターネットの自由で手軽さを実現している最大の特徴の一つに匿名性があります。

一方で一般個人の方のトラブルや被害も後を絶たないのも事実でインターネット登場当初からずっと議論されているテーマです。

その結果中国では、振り切って暗号通信禁止化など完全な監視社会を目指す方向にシフトしています。

この記事ではそのジレンマを技術的側面、日本の法制度側面双方でまとめてみました。

目次

サイト運営・ビジネス取引なは本人確認義務厳格化傾向

まず、サイト運営者、ビジネス取引を行う立場の本人確認は義務化傾向が強いです。

元から決済取引のために氏名・メールアドレス・住所などを入力させるところがほとんどでしたが、最近は決済手段の有無に関わらずクレジットカードを提出させたり、より厳格な場所だとマイナンバーカードや住民票提出を義務付けるWEBサービスもあります。

やはりただの自由入力だと架空の名前を使われて、トラブル発生時の本人特定が満足に資さないからでしょうか。

日本における特商法などの法規制もありますがこれは世界ビジネス全体にも言えそうです。

例えば、AmazonWebService(AWS)、GoogleCloudPlatform(GCP)、MicrosoftAzure(Azure)の3大クラウドはいずれも無料お試し利用期間であってもクレジットカードの登録を義務付けています。GCPやAzureに至っては、入力にあたり用途が決済目的ではないこと、料金徴収をしないなどを登録時の説明にいれているほどです。

現在、すべてのWEBビジネスがそうであるというわけではありませんが、この傾向はますます強くなっていくと思われます。

一般利用者は匿名化・プライバシー対策強化傾向

これに対して、一般利用者の匿名化・プライバシー対策が強化傾向であると思います。

従来WEBの通信は決済やログインをさせるもの以外ではhttpsは使わずhttpを利用することが当然でした。

しかし、今日ではhttpsを使うことが当たり前で、httpのままでサイト運営を行うと主要ブラウザにおいては警告まででてしまう時代になりました。

PFにおける個人データ収集に対する批判から、GAFA中心にビジネス・技術側面でもプライバシー対策は強化されています。

ITP問題をきっかけに3rdPartyCookieのブラウザ利用の厳格化、iOS15から登場したPrivateRelayなどが代表です。

また、日本の法律においても、この点は昔からとても厳格にみております。

憲法や電気通信事業法で定める「通信の秘密」が典型的なポイントです。あまりにも厳格で、海賊版サイトなどの違法サイトの「ブロッキング」対策について法的側面から不可能ではないかと言われたほどです。

なお、最近問題になっている電気通信事業法の改正の動きも通信の秘密ではありませんが、プライバシー強化の動きの一環です。

事業者から猛反発があり後退したという問題で話題になりましたが、現在は法案までできて国会審議の方向、その後省令で細かいところが決まっていく予定のようです。

狭間にあるインターネットの誹謗中傷問題

このようにみていくと、一般利用者サイドが起こす問題である誹謗中傷問題が間の状態にあるように思われます。

この課題に対して最も注目される法律がプロバイダ責任制限法と言われています。

発信者特定のコストや膨大なログの保存期間制約など課題が多いと言われており今年中により手続きを簡易化した改正法が2022年に施行予定です。

一方、これまで述べたようなプライバシー情勢を考えると、他の側面で特定困難性が生まれる可能性が出てきています。

※この辺りの課題について私自身も以下のような記事を過去に書いております。ご興味あればご覧ください。

Yahoo!JAPANが2020年にSMS認証をID取得を必須化するなど、なんらかの本人特定に資する情報をユーザー登録時に義務付けるという対策が一つあげられます。

もっともここで問題となっているのは、SNSや掲示板、口コミといった本来自由で手軽な書き込みができることを前提としていたものです。

この辺りのバランスを技術・ビジネス・法律の3点でどのように調整するのは、一業界人としても悩ましい課題と思っています。

例えば、ジャストアイデアとして、AIの活用によって問題のある投稿が公開前に削除されるのも一案と思います。実際にYahoo!JAPANではその対策も進められているようです。

もっとも、人間が判断するのも難しいフェイクニュースと呼ばれる投稿があるのも事実です。その点で積極削除だけが対策になるのかというのは悩ましいところと思っています。

終わりに

誰かに伝えたい記事というよりは、近年の仕事におけるもやもやを綴っただけの雑記ですが何か気づきを得られれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

Photo by Markus Spiske on Unsplash

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