この記事について
Sell in May という格言をご存知でしょうか。正確には「Sell in May, and go away. Don’t come back until St Leger day.」すなわち5月に株を売れ、そしてセント・レジャー・デイ(9月第2土曜日)までは相場に戻ってくるなという格言です。6月以降は夏枯れ相場になり、株価が停滞するので、5月に売ってしまい、10月以降まで株を買うなという格言です。この記事では実際にこの格言が有効なのか検証してみました。
検証
このブログではよく使っている、S&P500に連動するETF、SPYの20年間の推移を使って検証します。
投資方針としては以下のようにします。
- 投資資金は毎月$1000加算される(積立投資と同様、一般の方が少しずつお金を貯めて投資額を増やしていくことを想定しているためです。)
- 毎年5月に購入していたETFを全て売却して投資資金に回す
- 毎年5月-9月はETFを購入しない。(毎月投資資金が10万円たまるのみ)
- 毎年10月に投資資金全額でETFを購入
- 毎年11月-4月は加算された投資資金($1000)分ETFを買い足す
上記ルールを元にシミュレーションをしてみた結果が以下となります。
およそ30%ほどの利益がだせました。一応利益がでたもののこれだけでは本当に良い投資戦略かわかりません。他の売買タイミングでも検証してみます。
売買タイミングとして最も有効なのか検証
様々な組み合わせがありますが、今回は代表として以下の2パターンを検討します。
逆パターン戦略;5月から株を買って、10月で売る(=Buy in May)
- 投資資金は毎月$1000加算される
- 毎年10月に購入していたETFを全て売却して投資資金に回す
- 毎年10月-4月はETFを購入しない。
- 毎年5月に投資資金全額でETFを購入
- 毎年5月-9月は加算された投資資金($1000)分ETFを買い足す
1月タイミングをずらす戦略;4月に株を売って、9月から株を買う(=Sell in Aprill)
- 投資資金は毎月$1000加算される
- 毎年4月に購入していたETFを全て売却して投資資金に回す
- 毎年4月-9月はETFを購入しない。
- 毎年9月に投資資金全額でETFを購入
- 毎年10月-3月は加算された投資資金($1000)分ETFを買い足す
結果は以下のグラフでした。
「Buy in May」が「Sell in May」を上回りました。一方「Sell in April」は長らく長期元本割れが続き、2018年4月ころにわずかにプラスになるだけでした。詳細な考察は最後に回しますが、いずれにしろ時期を変えるだけでパフォーマンスに大きな影響を与えてしまうようです。
他の投資戦略と比較してみる
続いて、毎月$1000ずつ購入するドルコスト平均法のインデックス投資と比較してみます。以下が検証結果のグラフです。
およそ2倍近いパフォーマンスを出してインデックス投資が圧勝しました。もっともリーマンショック以前の2000-2010年はパフォーマンスだけでみると五分五分です。むしろ、リーマンショック期は「Sell in May」のほうがパフォーマンスが上です。ただし微々たる差ではあります。
考察
売買タイミングの考察パターンは3つのみであるため、不確定要素は多いです。少なくとも2000年-2020年の間では「Sell in May」はある程度パフォーマンスを出すことができるようです。しかしながら、逆パターン「Buy in May」の方がパフォーマンスは上回ります。「Buy in May」は人が株に寄り付かない夏枯れ相場にあえて手を出すため、ここはバリュー投資の理論である「割安に放置された株を購入する」という原理が働いてしまったのでしょうか。また、「Sell in April」と時期を1ヶ月ずらすだけで、パフォーマンスはガタ落ちてしまいました。こちらの原因は不明ですが、売買タイミングの違いはパフォーマンスに大きな変化を及ぼすようです。
また、インデックス投資と比較すると、リーマンショック前のアメリカ株市場低迷期にはそれほど差はなかったものの、2010-2020年のアメリカ株市場の好調期には大きな差を付けられてしまいました。売買を繰り返す本戦略に対し、インデックス投資は、暴落のリスクを100%受け入れるが暴騰の恩恵も100%受け入れるという戦略故に差をつけられてしまったと思われます。加えてインデックス投資よりも低リスクな運用ができているかというとリーマンショックタイミングには元本割れもしており、「Sell in May」が低リスクな戦略であるとも言うことができなそうです。
予測はいろいろあるものの、いずれにしろ、「Sell in May」を利用した今回の戦略は有効とは言えないというのが結論であると言えます。
おまけ;インデックス投資に「Sell in May」を応用する
最後に「Sell in May」をインデックス投資に応用を検証してみます。10月から4月だけETFを購入する戦略(10月は5-9月に貯めた額分ETFを購入)と購入保留期間なく毎月購入するインデックス投資戦略を比較してみます。
ドルコスト平均法のメカニズムをよく知っている方でしたらシミュレーションしなくてもすぐに予想がついたかもしれません。結果はぴったり並んでしましました。おそらく、ドルコスト平均法の原理が働いて購入平均価格が平準化されてしまったためと思われます。
終わりに
以上が私の「Sell in May」に関する検証結果でした。今回の検証では「Sell in May」はあまり活用しづらいという結論になりますが、今回の検証もあくまで一例であることにご注意ください。「Sell in May」に限らず、今後気になる投資戦略をみつけたら同様の検証してみたいと思います。