前回以下の記事を通じてサイエンスジャンルの自己啓発書をご紹介しました。今回は心理学系の自己啓発書をご紹介します。
心の休ませ方 「つらい時」をやり過ごす心理学
社会学・心理学者の加藤諦三先生の本です。NHKラジオで人生相談の番組をされており、知る人ぞ知る心理学者です。
テーマとしてはつらいことや息切れしたときにこころを休ませる方法について書かれている本です。加藤先生の本全般にいえることですが、とてもやさしく、読者に語りかけるように書いているので、この本を読んでいくだけで心が癒されていきます。その一方で読み終わったときには一つ精神的に成長したような気分になります。
どうしても「許せない」人
こちらも加藤諦三先生の本です。前回とは違い、「許せない人」というテーマで怒りや憎しみについて書かれています。この本も優しく語り掛けるテイストで書かれています。最初は今抱えている怒りや憎しみについて、戦っているあなたは立派なんだと励まし、最終的にはどうことロールしていくかについて語り掛けていきます。
私自身、この本を手に取ったときはこらえきれない怒りを抱えているときでした。本であるのに、最初はその怒りについて同情されている感覚を感じ、読んでいくうちに怒りが落ち着いていきました。落ち着いたところで、「許せない人」ということについて多角的に考えていき、「怒り」のコントロールについてまた一歩階段を上ったような気持ちになりました。
嫌われる勇気
知っている方も多いのではないかと思います。アドラー心理学ブームを生んだ一冊です。初版は2013年ですが、今でも定期的に話題になる一冊です。主人公とアドラー心理学とギリシャ哲学を研究する学者の対話をベースにアドラー心理学の考え方について学んでいく一冊です。
私自身も発売されて数か月後に本屋のブースで目につき、手に取って読みました。「誰かのために生きるべき、ただし、その人から見返りを求めてはいけない」という著者の主張は当時としては強烈に印象に残りました。本当に理解するにはアドラー心理学を学んだ年の半分はかかるといわれていますが、初めて読んでから7年ほどたちましたが、今でも「誰かのために生きるべき、ただし、その人から報酬を求めてはいけない」という言葉は理想と思いつつも、完全に腹落ちしていないところはあります。一方で、他の啓発書などを読んでこの主張に通じることが書かれていることは目にしており、難しいテーゼであると思っています。
幸せになる勇気
「嫌われる勇気」の続編です。前著でアドラー心理学を学んだ主人公が、実践したもののうまくいっていないと、学者の元に再度訪問して対話をする一冊となっています。私自身の印象としては、「幸せになる勇気」という題名通り、アドラー心理学は生き方に対してとても厳しい考えを持っているということを改めて実感させられた一冊でした。
ちなみに本題とははなれますが、人と対立したときの考え方として、自分の主張を単に言っていったり、相手の主張に単に従うのではなく、対話を通じてお互いにどういう解決策をとっていくことが良いのかを考えていくべきという主張は私の中で特に印象に残っています。
夜と霧
著者ヴィクトール・フランクル先生はユダヤ人心理学者です。第二次世界大戦中はアウシュビッツ収容所に収監された経験を通じて得た生きることについての著者の考えを綴った本です。
「私は何のために生きるのか」という声はよく聞きますが、著者は逆に「人生が私に何のために生きるべきなのかを問いかけているのだ」と述べています。これは、著者のアウシュビッツ収容所で命よりも自身の志を選んで死を選んだ人、逆に志よりも生きることを選んだ人、迫害する側の人にもあった情の心などの様々な人との出会い、経験を通じたものです。この本を読むまでは、「何のために生きてるんだろう」とか考えていた人間でしたが、この考え自体がとても浅いことを痛感しました。
「アンネの日記」「シンドラーのリスト」と同様、第二次大戦のユダヤ人迫害に関する史実書でもあるでもあるので、自己啓発目的でない人もぜひ一度手に取ってみるとよい本と思います。
ちなみに、「それでも人生にイエスと言う」という続刊もあります。私自身もまだ読んでいる最中の一冊ですが、「夜と霧」を読んでフランクル心理学に興味を持ちましたらこちらも読んでみることをお勧めします。
終わりに
今回は心理学系の自己啓発書について加藤諦三先生の心理学、アドラー心理学、フランクル心理学の3種類、計6冊をご紹介しました。有名どころが多いですが、もしも読んだことのない本があり、手に取ってみるきっかけとなりましたら幸いです。
次回は「仏教」のテーマで自己啓発書をご紹介できればと思います。
Photo by Stacy Marie on Unsplash