インデックス投資でETFと一般投資信託どちらが良い購入対象なのか検証してみた

投資 投資戦略を検証してみた

この記事について

この記事ではインデックス投資において、一般投資信託とETFどちらが良いのか調べてまとめました。 以前、こちらの記事で一般投資信託とETFどちらが良いのかをインデックス投資の戦略の検討ポイントとして上げました。今回はこちらについて詳細を深堀して行こうと思います。

いろんな本や記事を読みましたが、インデックス投資をするならETFの方が良い、一般投資信託の方が良いと様々な意見があります。今回は、最初に各種意見をまとめたあと、データを用いたシミュレーションを元に分析していきたいと思います。

一般投資信託とETF、それぞれの特徴とメリットデメリット

以前の記事でも触れましたがあらためてそれぞれの特徴について検討していこうと思います。

一般投資信託

一般投資信託の特徴はやはり、100円から購入できることです。ETFで問題になる端数が発生することがありません。一方で、信託報酬(※1)がETFより高めであること、ネット証券だと日本の投資信託しか購入できないため、インデックス商品を探すとなると似たような商品が多く、様々な商品に分散したい場合、選択肢がETFより狭いなどがデメリットとしてあげられるかと思います。

また、一般に投資商品には配当がでることがありますが、一般投資信託をネット証券で購入した場合、自動で配当を再投資にまわしてくれる設定をつけられるので管理負荷が低くてすみます。

(※1)信託報酬:投資商品について年間かかる手数料。一般に投資資産の年率で換算されます。

ETF

ETFとは上場投資信託の略で、投資信託でありながら、証券取引市場にて売買されております。株式のようにリアルタイムの時価で購入できるという特徴があります。日本のETF市場はあまり成熟していませんが、アメリカのETFは非常に様々な商品があり、インデックス投資を行う上でも商品選択に投資信託より幅があります。また、一般に信託報酬が一般投資信託より安いケースが多く、例えば、2020年5月現在、S&P500連動ETFで信託報酬が最も低いVOOは年率0.03%ですが、投資信託の場合、信託報酬低いSBI-SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドであっても0.0938%あります。

一方で、1口単位の価格で売買するため、小額での投資をするとなると、積立購入を主眼としたドルコスト平均法(※3)がやりにくいデメリットがあります。例えば毎月10000円インデックス投資するとして、1口7000円の資産を毎月買うとなると、資産を使いきれず、3000円余ってしまいます。また、定期的にリバランス(=資産の分配バランスを戻すこと)のときも1口単にの売買の性質ゆえに難しい課題があります。

ここまでは前回記事で述べたこととほぼ一緒ですが、そのほか、通常NISAのみで、つみたてNISAを利用できないなどもデメリットとしてありうると言えます。

(※3)ドルコスト平均法:一定間隔で定額ずつ資産を購入する方法。特定時期に大量購入するよりもリスク分散ができて良いと言われています。

シミュレーション実施

前述のまとめを元に、どのくらい影響があるのかデータを元にシミュレーションしてみます。

今回は、インデックス投資の対象として最も人気のある指数の一つである、アメリカの主要大企業500社の指数であるS&P500を利用して検証してみたいと思います。なお、指数の変化推移は以下のようになっており、ほぼ一環として右肩上がりの非常に優秀な指数といわれています。

また期間は、積立NISAを考慮して20年としております。

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ちなみに今回の記事では具体的なロジックについては公開しませんが、以降のシミュレーションはどれも、pythonというプログラミング言語を使って上記グラフのデータを元に算出しています。詳細を知りたい方ははじめてのプログラミングとしてのPython入門(実践編)をご覧ください。

検証1:コストにどれくらい差がでるのか

まず一般投資信託とETF、コストにどのくらい差が出るのか検討します。

本来信託報酬は毎日少しずつ引かれるものですが、一般に年率として公表されるため、今回は12ヶ月目に引かれるという計算をしてシミュレーションします。

ETFを業界最低率のVOOやIVVの0.03、一般投資信託を日本の商品の一般的な利率である0.1と仮定して計算します。

シミュレーションした結果のグラフは以下でした。

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ETFの推移、一般投資信託の推移、S&P500のオリジナル指数の推移と3つ並べたはずですが、グラフ上ではほぼ違いが現れませんでした。

続いて、20年間のトータルコストをみてみます。

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上の図にあるようにトータルコストだけみるとやはり、一般投資信託の方が高めのようです。しかし、一般投資信託であっても20年間のトータルはわずか$30以下でした。20年間で$30しかかかってないということは、S&P500のオリジナル指数とは20年程度の期間ではあまり解離しないようです。

検証2:ETFのデメリットが積立にどれだけ影響するのか

続いて、ETFの場合ドルコスト平均法がやりにくいというデメリットについて、どのくらい影響するのかシミュレーションしてみます。毎月$10000ETFを購入して積立を行い、20年で資産がどれくらいになるか計算してみます。

ETFの購入戦略としては2パターン想定しました。

  • ETF購入パターン 1:毎月$10000分購入する。お釣りは繰り越さない
  • ETF購入パターン 2:毎月$10000分購入する。お釣りは次月に繰り越す

上記2パターンに加えて、一般投資信託は端数購入も可能として仮定し、シミュレーションを実施します。結果が以下となります。

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「ETF購入パターン 1:毎月$10000分購入する。お釣りは繰り越さない」の積立はほか2パターンと比べて下がってしまいました。一方で、一般投資信託の積立と、「ETF購入パターン 2:毎月$10000分購入する。お釣りは次月に繰り越す」の積立はほぼ同じラインで推移しています。

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上の図は購入した口数単位での推移です。これをみると、年単位で差が大きくなっているのがわかります。

所持口数
年月 ETFパターン1 ETFパターン2 一般投資信託
2000/08 7 7 7.171
2001/08 84 91 92.011
2010/08 769 820 821.955
2019/08 1561 1678 1687.094
 
総資産
年月 ETFパターン1ETFパターン2 一般投資信託
2000/08 9761.22 9761.22 10000
2001/08 114711.568 124270.866 125566.626
2010/08 1057842.482 1127998.485 1125045.338
2019/08 4207455.130 4522812.113 4512914.202

上の表は具体的な数値の推移です。よくみると、2001年時点では一般投資信託が最も資産額が高いのに、2008年以降はパターン2の購入が抜いています。原因は定かではありません。考えられることとして、2001年時点では、パターン2の繰越方式の不自由さで一般投資信託の方が上回っていたのかと思われますが、2008年にはすでに平準化されていたこと。たまたま、近年は、資産が安いタイミングで繰越分を利用して購入することができた。その他、信託報酬のコストも影響してしまったのかもしれません。(※今回の検証でも、検証1と同様の信託報酬を算出してシミュレーションを行っています。)もっとも差としては微々たる差であるといえます。

考察

検証1と検証2の結果を元に考察していきます。

検証1からわかるように、一般投資信託はやはり、ETFより高めのコストがかかってしまいます。しかし、オリジナルの指数と比較しても、ETF、一般投資信託では、20年程度では大きな差はないことがわかりました。

一方検証2でわかるように、パターン2で実践したようにETFはお釣りの繰越を行うなどうまく工夫して定額購入をしないと、一般投資信託のパフォーマンスについていけません。確かに、パターン2のような工夫をすれば、ほぼ同等のパフォーマンスをだせます。しかしながら、現状、繰越などを自動で操作できるような高度なETF定額買い付けができるネット証券は存在しません。また、ETFの方がパフォーマンスが上回るといっても、微々たる差なので、実際の労力としてのメンテナンスコストを考慮すると一般投資信託で運用した方が良いのかもしれません。

なお、今回はS&P500の単一指数のみでの検証でした。しかし、実際のインデックス投資はリスク分散のため債券や他の株価指数の商品を購入するなど、資産を分散させるためリバランスがこれに加わります。今回は検証しませんでしたが、リバランスはETFだとよりやりにくいという弱点があるので、なおさら一般投資信託の選択の方が良いのかもしれません。

番外:ドルコスト平均法の威力

今回の検証とはずれますが、今回の検証2の結果はドルコスト平均法の威力も同時に物語っています。

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上の図は検証1のシミュレーション結果の再掲です。グラフにある通り、2000年から2007年までは、2000年当初の価格を下回った状態です。

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しかしながら、上の検証2の再掲グラフにある通り、7年の間、資産上は目立った元本割れはしていません。

同様に2008年にリーマンショックが発生していますが、S&P500の指数そのものは2013年まで価格を戻しませんでした。しかし積み立てた資産は2010-2011年頃でほぼ元本と同じ水準に回復しています。

ドルコスト平均法により、資産の購入タイミングが分散されているともに、価格が安いときに多く資産を買い、価格が高いときに抑えめに購入するという効果が働いていると言えます。

おわりに

以上が、ETFと一般投資信託どちらでインデックス投資が良いかについての検証でした。もっともこの検証は配当を考慮していないなど、やはり現実の運用とは異なるものかと思います。そのため、インデックス投資の戦略としての参考にしていただければありがたいですが、最終的な判断は自己判断でいただければと思います。

Photo by Austin Distel on Unsplash

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