この記事について
2020/4/15にPayPayボーナス運用がリリースされました。プレスリリースはこちらです。PayPayボーナスを利用して、投資体験ができるサービスのようです。この記事ではPayPayボーナス運用について、他社の投資体験サービスと比較しながら調べたことをまとめてみたいと思います。
PayPayボーナス運用の概要
概要サイトとPayPayアプリ内のよくある質問を元に調べてみました。
扱えるのはPayPayボーナスのみ
PayPayで扱うポイントはPayPayマネー、PayPayマネーライト、PayPayボーナス、PayPayボーナスライトの4種類があります。(詳細はこちら)この中でも、PayPayボーナスしか取り扱えないようです。PayPayマネー、PayPayマネーライト、PayPayボーナスライトは使えません。あくまで特典ポイントを利用した投資体験というコンセプトだからでしょうか。
手数料は無料
購入・引き出しともに手数料は無料のようです。もっとも、後述するようにマザーファンドがETFなので信託報酬はかかっていると思われます。
配当はもらえない
配当はもらえません。もっとも後述のS&P500指数のETFに投資していれば本来配当がもらえるはずなので、手数料としてとっているのでしょうか。それとも、よくある投資信託のように配当が自動的に再投資されるのかは不明です。
One Tap Buyとの提携機能
PayPay社単独の機能ではなくOne Tap Buyとの提携機能のようですOne Tap Buyは1000円からで本来の基準価格では購入できない額でも株が購入できるサービスを提供している会社です。
コースはスタンダードコースとチャレンジコースの2種類
スタンダードコースとチャレンジコースの2種類のコースが用意されています。概要サイトによると、スタンダードコースがSPDR S&P500 ETF、チャレンジコースがDIREXION S&P 500 3X(SPXL)のETFをマザーファンドが購入して運用しているようです。
スタンダードコースのSPDR S&P500 ETFとは、SPYという略称のもと、アメリカでも最も古い歴史を誇るETFです。
ETFとは、Exchange Traded Fund の略で、日本語では「上場投資信託」といいます。普通の投資信託と同じく、一般の方が1口あたりXXX円で購入し、投資信託の運営ファンドが受け取ったお金をもとに各種株式などの銘柄を購入して運用します。普通の投資信託との大きな違いは、「上場」と名がつく通り、証券取引所、日本で言うなら東証、アメリカでいうならニューヨーク取引市場のようなところで取引されています。一般的に上場されることにより信託報酬といった各種手数料が普通の投資信託より割安になる傾向があります。また、様々なものがありますが、一般に日本だとTOPIX、日経平均のような、指数に連動するように株を購入する商品が多いです。
SPYが連動する指数S&P500は日本で言うTOPIXのようなもので、アメリカの主要大企業500社の時価総額に連動します。S&P500は年単位では上下するものの、過去100年以上の平均6-8%ほどの利率で上昇しており、非常に優秀な利率です。信託報酬が年0.09であること考えると、信託報酬年0.03の願わくば業界最安値のバンガードのVOOだともっとよかったのに...という声もありますが、SPYも非常に優秀なETFであると思っております。
チャレンジコースのDIREXION S&P 500 3X(SPXL)は、おなじくETFでS&P500指数に連動するものですが、こちらはS&P500の動きに大して3倍の変化で推移します。
一般にレバレッジETFと呼ばれる商品です。レバレッジETFとは、ETFのマザーファンドがETF購入者から受け取った資産を元手に信用取引という制度でお金を借り入れます。SPXLの場合、3倍であるので、購入資金の2倍分、つまり資産合計3倍になるように借り入れます。借り入れた資産で当該指数に連動するように銘柄を購入します。借り入れをしている都合上、上昇すれば本来の上昇分に加えて、借り入れた分の上昇分も加えられるので3倍分利益をもらえますが、逆に下降したら本来の下降分に加えて借り入れした分の下降分も加算されて3倍分損失をだします。もしも、株価が半分になった場合、3倍150%の損失となり、理論上マイナスとなってしまいます。ここは追証という仕組みのおかげで、保険がかけられておりますが、それでもマザーファンドの倒産というリスクは普通のファンドよりもあります。
その点で文字通りリスクが高い商品といえます。また、借入をしている都合上普通のファンドよりも信託報酬が高めです。SPXLも年1.01%あります。レバレッジ商品はまた、長期で運用するほど価格の乖離が発生します。その点で長期の投資というよりは、短期トレード向きの商品といえます。レバレッジ商品の仕組みについて詳しく知りたい方は、人気沸騰「レバレッジ型ETF」の落とし穴を読んでみてください。
正直のところ、チャレンジコースでレバレッジ商品採用しているのは驚きでした。後述する他社もさすがにレバレッジ商品は採用していません。長期投資だけでなく、短期トレードの擬似体験もできるようにというコンセプトなのでしょうか。
※なお、ポイント投資とずれますが、私自身もS&P500の純粋なインデックス指数とレバレッジ指数それぞれを長期積立投資をした場合、どのような違いがでるのかについて、レバレッジ商品で積立投資をするとどうなるのか調査してみたでシミュレーションを作ってみました。よろしければこちらの記事もご覧ください。
他社の類似サービスと比較してみる
PayPayのボーナス運用だけの調査はここまでにして、他社の比較をしてみます。今回は、ドコモのdポイント投資、楽天のポイント運用の2つと比較したいと思います。
ドコモdポイント投資
こちらもdポイントをつかって投資体験ができるサービスのようです。特徴としては、コースが豊富で、まず大きな分類でおまかせ運用とテーマ運用があり、おまかせ運用の中にアクティブコースとバランスコース、テーマ運用の中に日経平均、ヘルスケアなどの8種類のコース、合計10種類の選択肢があるようです。
おまかせ運用の2コースがPayPayのスタンダードコースとチャレンジコースにあたると思われます。しかし、アクティブコースは「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」を80%、「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」を20%で運用し、バランスコースは、「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」を55%、「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」を45%で運用しているようです。「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」ともに、AIを利用した運用を行なっているTHEO(株式会社お金のデザイン)の提供投資信託です。両ファンドともこちらのファンドを見るとETFを中心に運用しているようで、PayPayのチャレンジコースのようなレバレッジファンドを運用していないのでリスクは低めとおもわれます。
楽天ポイント運用
こちらはRポイントを使って投資体験ができるサービスのようです。こちらはアクティブコースとバランスコースの2つだけのようです。アクティブコースは、楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型)、バランスコースは 楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)に連動しているようです。どちらも、他と同様世界のETFを購入して運用している一方、レバレッジ商品は購入していないので、リスクはPayPayのチャレンジコースより低めと思われます。
ちなみにPayPay、ドコモと違い、楽天証券を契約すればポイントで楽天証券の商品の購入ができるので、実質的な投資商品はこの3つの中で最も多いとおもわれます。
3社の比較
ドコモのテーマ運用を除いた3社の各コースをまとめてみました。
# | 会社 | コース | 連動指数 | リスク |
---|---|---|---|---|
1 | PayPay | チャレンジコース | DIREXION S&P 500 3X(SPXL) | とても高い |
2 | PayPay | スタンダードコース | SPDR S&P500 | 高い |
3 | ドコモ | アクティブコース | 「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」を80% 「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」を20% |
やや高め |
4 | ドコモ | バランスコース | 「THEOグロース・AIファンド(世界の株式中心)」を55% 「THEOインカム・AIファンド(世界の債券中心)」を45% |
普通 |
5 | 楽天 | アクティブコース | 楽天・インデックス・バランス・ファンド(株式重視型) | やや高め |
6 | 楽天 | バランスコース | 楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型) | 普通 |
考察
楽天・ドコモのアクティブコースは、なんだかんだ債券が含まれているのに対して、PayPayの両コースはどちらも株式統一です。その点で、PayPayの両コースがこの6つのなかで最もリスクが高そうです。また、楽天・ドコモのバランスコースも債権統一ではないので、債権だけの投資に比べたらリスクは高めかもしれません。
まとめ
以上がPayPayのボーナス運用と、類似サービスを運用する2社の比較でした。日本政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げているので今後もこういったサービスは増えるかもしれません。もしも気になるサービスがあれば今後も調べて発信して行こうかと思います。
Photo by Markus Spiske on Unsplash