この記事について
この記事ではジェレミー・シーゲル著「株式投資の未来 永続する会社が本当の利益をもたらす」についてご紹介したいと思います。
出会ったきっかけ
「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」と同じきっかけです。この時に前著とあわせてセットで購入しました。
どんな本?・感想
前作「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」が、株式投資に関する全体的なベースとなる性質の解説であるのに対して、続作であるこちらは、前作の知識をベースにして、どのような戦略を持って投資に望むべきかの研究が語られています。前作の第9章の「市場に勝つ」をより深く研究した1冊といえます。
高配当投資、セクター別投資、国際戦略などさまざまな戦略の可能性についての研究結果をつづられていますが、テーマとして一貫しているのは「成長の罠」といものです。必ずしも高成長を遂げている企業の株を購入することが長期投資にとっては高い利益につながらないということについて言及されています。※詳しい理由は是非この本を読んでみてください。
この本で述べられていることは、いわゆる「スマートベータ戦略」です。ウォール街のランダムウォーカー では「スマートベータ戦略」であっても、そこに人気が集中することにより、割高になってしまい、結果的には途中からの参入者は大きな利益を得られないと書いております。その点で、この2冊は相入れない思想を持っていると思う方もいるかもしれません。そして、人によっては、2000年代後半で止まっている本書に対して、現在もなお新しい版がだされる「ウォール街のランダムウォーカー 」のほうが正しいことを言っていると思う人も多いかもしれません。
しかしながら私自身はそうは思っていません。むしろどちらも正しい言及と思っています。現実に、本書であっても例えば、過去のデータ分析の結果もっとも高いパフォーマンスが出ていた「高配当投資戦略」であっても、メインの投資手法とせずあくまでポートフォリオのサブとしておき、むしろ様々な戦略の分散をまとめとしてうたっています。現実に、ウォール街のランダムウォーカーでも各種投資戦略の人気・不人気の時代の流れを指摘しており、ときとして、その戦略がハマるときに利益を得られることについて言及しています。おそらく本書の筆者もこの点を承知しているからこそ、一つの投資戦略の単独投資をおすすめしていないと思われます。
ここまで、「市場に勝つ」ばかり強調しましたが、むしろ、この本が最もアピールしたいのは、「市場に勝つ」ことよりも、分散とバリュエーション投資が最終的にディフェンシブなパフォーマンスをもたらし、結果的に、市場平均を上回る「可能性」があるということではないかと思っています。やや哲学的な言い方になってしまいますが、「市場に勝つ」ではなく、ディフェンシブに「市場に負けない」ということの重点が最終的に「市場に勝つ」ということを示唆するのが両書籍共通でいえるのかもしれません。その一つが、ウォール街のランダムウォーカー で結論に到ったインデックス投資の戦略であり、本書が結論として出したバリュー投資系の分散投資戦略ではないかと思っています。
おわりに
書籍紹介というより、私自身の書評という記事になってしまいましたが、これまでバフェット関連書籍などを読みバリュー投資に魅力を持っていた私にとっては、インデックス投資系の指数投資と個別株投資で学んできたバリュー投資が一本につながった一冊でした。これまで30ー40冊ほど投資・経済関連の書籍を読みましたが、どれか1冊しか手元におけないと言われたらこの1冊を残す選択をするほどの投資書籍のバイブルです。
初心者がこの本にたどり着くためには、まず簡単な投資書籍で口座の作り方やPER、PBRといった基本用語を覚え、続いて前著「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」をまずベース知識として読まないといけない...というなかなかハードルが高いものと思います。しかし、もしも投資がおもしろいと思う方がいましたら、是非ここまでたどり着いていただきたい一冊と思っています。
Photo by Austin Distel on Unsplash