この記事について
投資というとインデックス投資が現在最も主流ですが。実は様々な投資戦略が存在します。この記事では個人的に気になっている株式投資戦略を紹介していこうと思います。なお、私の投資性向から、機械的に特定条件の銘柄を買っていくスマートベータ戦略や個別株の中長期戦略が中心です。逆に短期的なトレード戦略、テクニカル投資戦略は1つも扱っていないです。この点ご了承ください。
注意
あくまで個人的主観の評価です。投資判断は自己責任でお願いいたします。難易度、お手軽度、パフォーマンス期待値も書籍や調査、投資経験などを通じて得た過去の実績からの主観値です。特にパフォーマンス期待値については、世界経済の未来はわからないので過去の実績がそのままあてはまるのかわかりません。その点ご理解の上読むようにお願いいたします。
今回紹介するもの
今回は以下の10種類をご紹介します。
- グロース投資
- バリュー投資
- ネットネット株投資/シケモク投資
- 魔法の公式
- 買収者のマルチプル
- 高配当投資
- ダウの犬
- S&P10種/S&Pコア10種
- 「賢明なる投資家」における防衛的投資家の投資手法
- ウォーレンバフェットとチャーリーマンガーの投資(バリュー投資とグロース投資の併用)
評価について
主観評価ですが以下の5種類の評価を5段階表示でつけています。
- 難易度:対象銘柄を見つける難易度です。高いほど見つけにくいです。なお目安として、★2以上は四季報の記載が理解できるなど、ある程度財務知識が必要です。もしも★2以上の戦略に興味があるものの財務知識に不安がある方はあわせてこちらの記事も読んでみることをおすすめします。
- お手軽度:調査や売買などにかかる手間です。高いほど手間がかかりません。
- パフォーマンス期待度:インデックス投資よりもどのくらい高いパフォーマンスをだせそうかの評価です。★1はインデックス投資と同等のパフォーマンスしか出ない見込みです。なお、今回並べたものは著名な投資家や経済学者が提唱したものであるため、平等な信憑生を持つものとしていますが、あくまで過去の実績であることにご注意ください。
- 精神的優しさ:仮に株価が暴落したとしても自信持って投資戦略を続けられるかの難易度です。低いほど続けるためには高い精神力が必要です。
- おすすめ度:これまでの評価をもとに著者である私がおすすめであるかどうかの評価です。
グロース株投資
難易度:★★★☆☆
お手軽度:★★☆☆☆
パフォーマンス期待度:★★★★☆
精神的優しさ:★★★☆☆
おすすめ度:★★★★☆
文字通り、今後成長の期待ができる銘柄を購入して保持する戦略です。極端な話ですが、圧倒的な株価の成長をはたし、株価が10倍となる株を持っていたら大儲けできます。その点でパフォーマンスの期待値はとても高いです。
他の投資手法にも言えますが、インデックス投資は、一般投資家の8割に勝つと言われています。その上、成長株探しは難易度高めです。短期的な成長期待株は、みんながすでに目をつけてるため割高になっており、企業としては成長したとしても株価自体はあまり上昇見込みがありません。むしろ、成長が想定以下であった場合は暴落する可能性もあります。逆に長期的な成長期待はますます不透明性が高く、見極めるのが非常に難しいです。確実に上昇すると自信持って持ち続けることも難しいです。
個別株投資全てにいえることですが、本気で個別株投資を志すのであれば四季報を毎期読破するくらいの覚悟は必要です。世界一の投資家の1人ウォーレンバフェットも、ムーディーズマニュアルという四季報のように米国株の業績を一覧化した本をいつでも持ち歩いてみていたと言われているほどです。
ここまで厳しいことを言いましたが、もっとも、勤め先の業界、取引先の業界など、自分にとって身近な業界のみを選ぶことで手間は減らせます。さらに会社勤めでなんらかのビジネスに関わる人であれば、ここでの調査知識が日頃の仕事に役立つことは間違い無いです。そのため私個人的には企業を調べる時間がすこしでもあるのであれば個別株投資は是非挑戦していただきたく、おすすめ度は高いです。
興味がある方は以下の本を読んでみることをお勧めします。
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株式投資としては基本的なスタイルと思われがちですが、株式を見つけるための難易度は高めのため、初心者には後述する高配当投資・防衛的投資家の投資戦略の方がおすすめというのが現状です。
バリュー株投資
難易度:★★★★☆
お手軽度:★☆☆☆☆
パフォーマンス期待度:★★★☆☆
精神的優しさ:★★☆☆☆
おすすめ度:★★★☆☆
グロース投資と双極の考えがバリュー投資です。世間的に人気がなく割安になっている株を購入して、適性価格になるのを期待して購入する戦略です。
難易度・手間はグロース株と同様です。割安に放置されている株がいつ脚光を浴びるかは未知数なうえ、マイナーであったり世間的に批判を受ける企業であるが故に自信持って持ち続けるためには相応の精神力も必要です。その点でグロース株投資よりも精神的に試されるため、グロース株投資よりはおすすめ度は低いです。
もしも興味があればこの辺りの本を読んで見ることをおすすめします。
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バリュー投資は、ウォーレンバフェットの師匠ベンジャミングレアムが考案した投資手法で様々な派生があります。ここからはバリュー投資の派生を3つ紹介していきます。
ネットネット株投資/シケモク投資
難易度:★★★★★
お手軽度:☆☆☆☆☆
パフォーマンス期待度:★★★★★
精神的優しさ:☆☆☆☆☆
おすすめ度:☆☆☆☆☆
もっとも原始的なバリュー投資の手法であり、バリュー投資のなかでも、特に苛烈な手法です。通称シケモク投資の名の通り、衰退途上の企業の最後の一瞬の反映を狙ったり、近日解散見込みの企業だが、企業資産は株価より上回っているような企業の株を買う投資手法です。
パフォーマンスや投資の難しさについて、詳細は割愛しますが、「スノーボール ウォーレンバフェット伝」などを読んでみるとそのすさまじさ、難しさがわかります。
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私自身、正直のところ過去の投資と思っています。すでにこの投資手法は人に知られすぎて上場企業ではまずこの手の企業は見つけられません。それ故におすすめはできないです。ベンジャミングレアム自身の著書である「賢明なる投資家」でもこの投資手法はほぼ触れられていません。
魔法の公式
難易度:★☆☆☆☆
お手軽度:★★★★☆
パフォーマンス期待度:★★★☆☆
精神的優しさ:★☆☆☆☆
おすすめ度:★★☆☆☆
ジョエル・グリーンブラット著「株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」」で紹介されている投資手法です。一言で言うと、定量的な財務データを元に、割安に放置されているが、企業としての業績の良い企業の株を機械的に売買していく投資戦略です。
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簡単に解説するとEBIT(金利税引き前利益)/(正味運転資本額+準固定資産額)の25%以上の銘柄からとEBIT/EV(企業価値)が低い順に30銘柄ほど等しい量で購入し、1年後に再度確認して変動があれば入れ替えると言う投資手法です。難しい指数がでましたが、著者自らこのような公式ページを公開しているので米国企業での実践はお手軽で難易度も低いです。また、ある程度数字が分かる人であれば、ROAやROE、PERで代用できますので、日本株で応用することもできます。
パフォーマンスはのちに紹介する書籍「ディープバリュー投資入門」によると30年仮に運用すると、米国の主要大企業500社の平均株価指数であるS&P500の約38倍のパフォーマンスが出せるようです。
もっともリスクはかなり高めで、上下の変動はかなり激しいです。さらにリストで出てくる企業をみてみればわかりますが、本当にこの会社の株を買っていいのだろうかと心配になる銘柄だらけです。過去のシミュレーション上ではパフォーマンスが良かったとはいえ、今後も同等のパフォーマンスがだせるという保証も無いためかなり精神力がいる投資手法です。
また、機械的な購入であるという点で、自身の投資スキル、経済・ビジネス知識の向上も望めない点から個人的にはあまりおすすめできません。
買収者のマルチプル
難易度:★☆☆☆☆
お手軽度:★★★★☆
パフォーマンス期待度:★★★★☆
精神的優しさ:★☆☆☆☆
おすすめ度:★☆☆☆☆
魔法の公式流の機械的バリュー投資をもっと苛烈にしたものがトビアス・E・カーライル著「ディープバリュー投資入門 ──「平均回帰が割安銘柄を上昇させる」」で紹介している「買収者のマルチプル」です。企業を買収しようとする方の戦略指標であることからこの名前が付けられています。端的に述べると魔法の公式の「収益が良い株」かつ「割安株」という2つの指標のうち、「割安株」だけを選んで機械的に購入します。
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理論値上、30年運用で「魔法の公式」の2-3倍のリターンが望めるようです。こちらも著者自ら公式サイトを開設しています。
おすすめしない理由は、魔法の公式と同様です。加えてややマニアックな単一指標故に、魔法の公式以上に応用がしづらいという点も難点です。
高配当投資
※ETFの場合
難易度:★☆☆☆☆
お手軽度:★★★★★
パフォーマンス期待度:★☆☆☆☆
精神的優しさ:★★★★☆
おすすめ度:★★★★☆
※個別銘柄の場合
難易度:★★☆☆☆
お手軽度:★★★★☆
パフォーマンス期待度:★☆☆☆☆
精神的優しさ:★★★★☆
おすすめ度:★★★★★
高配当率の株を選んで投資していく手法です。高配当株がなぜ高パフォーマンスとなるかは諸説ありますが、一般的に以下が述べられています。バリュー投資の亜種という扱いもできます。
- 配当率が高い理由は割安に放置されているから。
- 配当を出す以上企業の業績に問題がない。
- 劇的ではないにしてもある程度の成長可能性がある。業績が良い企業であればさらに増配してくれる。
ミニマムに行うのであれば、米国の高配当ETFのVYMやHDVを買うだけでできます。その点でとてもお手軽です。
個別株を選ぶという選択肢もグロース投資やバリュー投資よりは銘柄を探す難易度が低く、お手軽です。また、購入する銘柄も自然と有名な企業が多く精神的な安定性もあります。配当を受けたら再投資するのが理想ですが、不労所得をもらえる、積み立てていくとだんだん増えていくという点、比較的有名企業になると言う点で精神的にも優しい投資です。
なお、個別株で実施するのでしたら以下の書籍をおすすめします。どちらも初心者向けで簡単に読めます。
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前者はファイナンスプランニングの総合書で、後者は高配当株投資の専門書です。どちらの著者もYouTubeチャンネルを解説しているのでもしも本に抵抗ある方はこちらをまず見てみることをお勧めします。
弱点はインデックス投資と現実的なパフォーマンスはトントンになりやすいです。参考までに、高配当ETFであるVYMの積立投資とS&P500の積立投資のパフォーマンスについてこちらの記事で検証を書きましたので興味があれば確認してみてください。なお個別株投資を選択すれば、グロース投資なども銘柄選定に考慮にいれることでパフォーマンスの向上を測れる可能性はあります。
とはいえ、アクティブ投資の8割がインデックス投資に負けるといわれる中でインデックス投資とほぼ同等のパフォーマンスを出せているという点、不労所得を得られると言う精神的な優しさ、個別銘柄の選択も比較的容易であるとともに、選択の際に行った調査を通じて経済・ビジネス的な知見や教養を得ることになり投資以外でも役に立ちます。インデックス投資以外の投資がしたい初心者にはおすすめの投資手法です。
高配当投資にも派生がいくつかあるのでここから2つご紹介します。
ダウの犬
難易度:★☆☆☆☆
お手軽度:★★★★☆
パフォーマンス期待度:★★☆☆☆
精神的優しさ:★★★★★
おすすめ度:★★★☆☆
ダウの30銘柄の中から、最も配当率が高い10名柄を購入、毎年配当率順位を見直して入れ替えていくという投資手法です。ジェレミーシーゲル著「株式投資の未来」によると、ダウ30種の1957-2003のパフォーマンスは年平均11.18%ですが、ダウの犬を採用すると14.43%とパフォーマンスが高かったようです。ウォーレンバフェットの平均利回りでも20%であることを考慮すると、かなり高めのパフォーマンスと言えます。
専門書としては以下があります。もっとも、ネットで検索すると様々な記事がみつかるので、専門書がないとできない投資手法ではないです。
応用性も高く、TOPIXコア30を用いることで日本株も利用できます。ダウやTOPIXコア30に選ばれていること自体が優秀な企業であるため、購入することについての精神的優しさもあります。
ETF1つ買うだけでできる高配当戦略よりはお手軽度は下がり、個別株を購入するとしても機械的である点で付加的なスキルや教養が身につかない点でおすすめ度は下がります。もっとも個別株を買いたいが、銘柄分析まではできないという方にはおすすめの投資戦略です。
S&P10種/S&Pコア10種
難易度:★☆☆☆☆
お手軽度:★★★☆☆
パフォーマンス期待度:★★★☆☆
精神的優しさ:★★★☆☆
おすすめ度:★★☆☆☆
ジェレミーシーゲル著「株式投資の未来」でダウの犬の応用として提示されている投資手法です。S&P10種はS&P500から高配当銘柄10種類選び1年ごとに見直して運用していきます。S&Pコア10種はS&P10種の条件に15年間減配していないという条件を加えています。それぞれ、S&P10種が15.69、S&Pコア10種は15.68とダウの犬の14.43より高めです。
対象が500と数が多いため、日本という環境ではリストアップし辛く、日本人としては知らない企業のリストが出てくることも多いことを考えると精神的な優しさも低く、個人的にはお勧め度も下がります。
「賢明なる投資家」における防衛的投資家の投資手法
難易度:★★☆☆☆
お手軽度:★★★☆☆
パフォーマンス期待度:★☆☆☆☆
精神的優しさ:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
バリュー投資でも紹介したバリュー投資の父ベンジャミングレアム著「賢明なる投資家」で記載される投資手法です。この本では「積極的投資家」と「防衛的投資家」の2種類の投資パターンを紹介しています。どちらもバリュー投資の一種ですが、後者「防衛的投資家」は市場平均と同等のパフォーマンスを目指すという点で初心者向けの投資手法として紹介されています。
1970年代に書かれた本のため、ETFがなかった時代に書かれた本です。そのため今となっては「ETFやインデックス指数の投資信託買えばいいじゃん」ということになってしまいますが、それでも個別株を志す方にはお勧めです。必然的に優良大企業を選ぶことになるため精神的にも優しいです。
応用性もあるので、ここに成長期待・高配当などの他要素の調査を加えることができれば、市場以上のパフォーマンスを出せる可能性もあるかもしれません。特に成長期待を考慮することができれば後述するバフェット流の投資に発展できる可能性もあります。地味な投資手法でありますが、難易度が低く、個別株投資故の調査を通じた経済・会計面での教養・スキルが身につくと言う点で高配当投資と同じくおすすめの投資手法です。
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ちなみに私の個別株投資は2020年8月現在こちらをベースにしています。詳細はこちらを参照ください。
ウォーレンバフェットとチャーリーマンガーの投資(バリュー投資とグロース投資の併用)
難易度:★★★★☆
お手軽度:★☆☆☆☆
パフォーマンス期待度:★★★☆☆
精神的優しさ:★★★☆☆
おすすめ度:★★★★★
最後にウォーレンバフェットとチャーリーマンガーが提唱する投資手法を紹介します。もっとも両氏の投資手法は年々変化しており、ある種の到達点として提唱した投資手法であり、現在も微修正を加えられていると思います。その点で理想論という考え方が良いかもしれません。端的にいうと、「素晴らしい事業をそこそこの値段で買う」という考えの下、バリュー投資とグロース投資の併用をする投資手法です。銘柄を見つけ出す難易度は言うまでもないですが、視点も超長期のため、短期的なパフォーマンスの期待はグロース投資やバリュー投資に劣る可能性があります。その点で精神力もある程度要求されます。
難易度こそは高いですが個別株投資の投資家が最終的に目指す戦略として、おすすめ度は一応最高にします。
バフェット本はたくさん出ていますが、「ビジネスエリートになるための 教養としての投資」という本を参考文献としておすすめします。日本人としてバフェット流投資を実践している方が買いた本です。他のバフェット本に比べて専門用語も少なく、初心者向けかなと思います。
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おわりに
以上が私個人が気にしている株式投資戦略の紹介でした。個人的には、せっかくインデックス投資ではなく、他の戦略をとって投資をするのであれば、パフォーマンスは最低市場平均レベルで、個別株分析もある程度挑戦して、経済や会計、ビジネススキルの教養も高めていく投資手法がいいかなと思ってます。
また、お気づきかと思いますが、これらの投資戦略は併用可能なので様々な分析、投資手法のチャレンジをしてみて、最終的に自分自身が納得する投資戦略を作ることが理想と思います。
この記事が投資戦略の選択にお役にたてば幸いです。